「おっ!!」
「えっ?!」

おみくじを引いたら、二人とも大吉だった。
今まで毎年のように引いて来たけど、二人して大吉になったことがなかったのに。

「今年は良いことありそうね」
「……だな」

縁起物は幾つあっても邪魔にならない。
翔と二人で社務所でお守りを買う。
いつもより、ほんの少し気分よく参拝を済ませ、長階段を下りてると。

「凜」
「ん?」
「いいか、よく聞け」
「………何?」
「今年で最後にするからな」
「そうなんだ」
「何だ、その言い方」

何が最後なのかさっぱりだけど、翔がこういう話題を言う時は、相当考えて口にしている。
だから、私が何を言おうが、彼の考えが変わることは無い。

「何のこと言ってるのか分からないけど、熟慮して決断したから言ったんでしょ?」
「……ん」
「だから、私がどうこう言うことじゃないと思って」

階段を半分ほど下りた所で彼は足を止めた。

「ごめん、言い方悪かった?」

翔という人間を知り尽くしてるから、飾り気のない言葉になってしまったかも。

「あ、いや、通じてねぇなぁと思って」
「何が?」

彼は私を真っすぐ見据えてゆっくりと私の元に歩み寄る。

「凜にプロポーズするの、今年が最後だから」
「……好きな人でも出来たの?」
「……ん、いるよ」
「そっか」

大吉出て、凄く嬉しかったのに。
何だろう?やっぱり神様はいないみたい。
私から翔を奪おうとしてる。

だけど、翔が幸せならそれでいいかな。
今までずっと傍にいてくれただけで有難いもの。

もう26歳になったんだもんね、大人にならないと、……かな。