(凜の26歳の誕生日の2日後、元旦)

「りーーんっ、腹減ったぁ~~っ!」
「おはよっ、今年もよろしくね」
「おぅ、ことよろぉ~」

朝起きてリビングに下りると、既に翔がいた。
うちの合鍵を持ってるから、勝手に入って来るのはいつものこと。

「おせち?それともお雑煮?」
「何でもいい。二時間ロードワークして来たからめっちゃ減ってる」
「えっ、もうして来たの?」
「ん」

翔は毎日欠かさずトレーニングする。
怪我をして暫く出来なかったから、それを取り戻す為に今はかなり追い込んでるっぽい。
翔好みのお雑煮を作り、詰めておいたおせちも並べた。

***

「外寒かった?」
「今日は結構冷えるかも。曇ってるから」
「じゃあ、着込んで来るね」

昼過ぎ、いつもロードワークに使ってる神社へ翔と初詣するのも毎年恒例。
寒がりの私は、着ぶくれするくらい着込んで翔が待つ庭へと出た。

「寒っ…」
「カイロ貼って来たか?」
「お腹に貼って来た」
「んじゃあ、行くか」

口元から白い息が漏れ、鼻がツンとし、耳がピリピリと痛む中、翔と肩を並べてゆっくり歩く。

「二年ぶりだね」
「だな」

去年は翔が怪我して入院していたこともあって、私一人でお参りした。
こじんまりとした神社だから参拝客は殆どいない。
地元の人が数人いるだけ。
顔見知りの神主さんに挨拶して、お参りをする。

翔がいつにもまして長い時間手を合わせていた。