「えっ?!じゃあ、大学に行くために学費貯めてんの?」
「うん」
「何の大学?」
「公立の大学」
「そうじゃなくて」
「何を専攻するかは今は言えない」
「何で」
「受かったら教えるよ」
「何だよ、それ」
「翔と違って頭良くないし、受かるか分からないもん」
「けど、受かるためにバイトしてんだろ?」
「うん」
「何のバイト?」
「化粧品会社の工場で梱包の流れ作業してる」
「は?」

バイトはバイトでも、てっきりコンビニとかレストランとか本屋とか、そういうのをイメージしてたけど。
工場って。
あ、でも、凜という人物をよく考えたら分かるかも。
人付き合いあまり得意じゃないし、黙々と作業するの得意だしな。

「体、疲れねぇの?」
「最初はすごく疲れたけど、もう慣れた」
「そっか」

大学に進学することすら黙っていたから、凜の母親も言えずにいたわけか。
教えてくれなかったことはやっぱショックだけど、彼氏が出来たとか、好きな奴が出来たとかじゃなかったから一安心。

「翔は彼女出来たの?」
「ん?」
「ヨーロッパの女性って魅力的というか、アピール上手っぽいし、美人が多いイメージしかない」
「……いないよ」
「ホント?嘘吐いてない?」
「吐く意味がわかんねぇ」

俺はお前しか見えてねぇっての。

「凜」
「なーに?」
「結婚しよう」
「やだよ」
「何でだよっ」
「今はやりたいことがあるもん」
「結婚しても出来んじゃん」
「……だとしても、まだ無理」
「んだよっ」

今年で八回目のプロポーズ。
あえなく撃沈。
でも、まぁ、俺もまだ準備が出来てねぇからいいんだけど。