凜の家に到着したけど、凜の姿がない。

「凜ママ~、凜は?」
「夕方には帰ってくるはずなんだけど……」

夕方って、もう十七時じゃん。
外はもうすっかり暗くなってるってのに。

「ちょっとそこら辺まで迎えに行って来る」
「うん、気を付けてね~」

凛ママはバースデーケーキのデコレーションで忙しそうにしてる。
父親は凜の為に手巻き寿司の準備をしていて、俺の相手は誰もしてくれない。
ダウンジャケットを羽織って、家から駅までの道のりを歩いていると。

「凜っ!」
「あっ、翔おかえり~~」

凛が俺の元に駆け寄って来る。
これこれ、この光景をどんなに待ち侘びたことか。

「どうしたの?ロードワーク?」
「んなわけねぇだろ」
「え?……じゃあ、何?」
「凜の迎え、もう真っ暗じゃん」
「あ、……そうだったんだ」

なんか、やっぱり雰囲気が変わった気がする。

「浮気か?」
「ん?」
「彼氏でも出来たか?」
「………」

聞きたくないけど、聞かないでいられない。
『いるわけないじゃん』って即答して欲しいのに、何で黙ってんだよ。

凜に『好きだ』『付き合って』とは言ったことがない。
それらをすっ飛ばして『結婚しよう』とは毎年言ってるけど。

本当の彼氏じゃないから追及する権利は無いのかもしれない。
だけど、いるならいるで言って欲しいし。
いるとして、俺以上の男かこの目で確かめるまでは日本から離れられない。

離れて暮らせば、それだけリスクがあるのも承知で海外に出たわけだから。