「……はぁ…………」
月曜日、大きなため息をついて、職場のデスクへ突っ伏す。
ため息とともに幸せが逃げるって言われてるけど、もしそれが本当だとしたら私にはもう幸せなんてひとつも残っていない可能性が高い。
それぐらい何度もため息をついている。
それでもって、こうして月曜日の仕事前に落ち込んでいると言うことはどう言うことか、どうか察して欲しい……。
土曜日に引き続き日曜の昨日ももちろん彼の家を探しに行ったのだけれど……結局見つからず仕舞いだった。
しかもやっぱりしっかり、迷子になった。
「野村さん、どうかしたんですか?」
深いため息をついて机に伏している私にそう私の声を掛けたのは、私の隣のデスクに座っている後輩の若月結麻(わかつき ゆま)だった。
「若月ちゃ~んっ。ねえ、方向音痴って、どうやったら直るー???」
「えっ? えっと……」
困ったように眉をハの字にした若月ちゃんがあまりにも可愛いすぎる。
この可愛い後輩がもうすぐ人妻になるというのだから、世の中は実に正常に回ってるのだと、妙に納得してしまう。
と言うことはあれか。
私の方向音痴も、それは世の中の平常通りのうちのひとつなのか。
それだけは全くもって歓迎できないけれど……。
「あはは、ごめんごめん。忘れて~」
誰かに相談したぐらいで方向音痴が直るのなら、きっと今頃すっかり直ってるはずだ。
だめだめ、仕事に私情は持ち込まない。
プライベートと仕事は完全に切り離す、それが私のモットーなんだから。
私は今日の役員の方々のスケジュールを確認し直して、よし、と気合いを入れ、デスクへと向き直った――。