その後も地味な嫌がらせは続いた。
机の中に「ブス」と書かれた紙屑を詰め込まれたり、ノートが何故かゴミ箱にあったり。

地味すぎて腹立つのよね……。
これだから女は嫌いなのよ…(私も女だけど)。


「――大丈夫?」


話しかけてきたのは、意外にも九竜だった。


「九竜…」
「それ、捨てるの手伝おうか?」


それ、と言うのは大量の紙屑のことだろう。


「平気よ。ただのゴミだし」
「そう」
「てか九竜って、他人(ひと)の心配できたのね…」
「春日井は咲玖の友達だから」
「えっ」
「最近咲玖が春日井の話ばっかりするから、ちょっとつまんない」
「……、あんたってほんとに咲玖のこと好きなのね」
「そうだけど…」


ここまで好きがダダ漏れなのもすごいけど、当の咲玖がまったく気づいてないのがまたすごいわ…。
あの子はどう考えても恋愛的な好きではなさそうだし…。


「ま、わかるけどね。私も咲玖好きだから」
「…俺の許嫁だからね」
「盗らないわよ!」
「……。」
「疑わしそうに見ないでよ…とにかく咲玖には言わないでね」
「うん、わかった」


内心では私に嫌がらせしてる奴らにざまあみろ、と思っていた。
九竜はこの通り咲玖のことしか見てないんだから、あんたたちがいくら横恋慕しようが無駄なのよ。