その日は生まれた時から一緒にいる、云わば腐れ縁のような、気も身体も強い幼馴染の誕生日だった。

幼稚園も小中学校も同じだった俺たち。

お互い高校が別になってから会う機会はとてもではないが減ってしまった。

完全ではないというのは、平日は難しいが、土日は一日中あいつの家にいるか、あいつが俺の家にいるかだからだ。

ちょっとした事で喧嘩してしまうが、いつもなら10分経たないうちに仲直りしている。

喧嘩をするほど仲がいい、なんて言葉を耳にするが、認めたもんじゃない。

だが、今回は違った。

あれこれ1週間以上の喧嘩をして、最近はお互いの家に行かなければろくに口も聞いていない。

原因は忘れたが、些細なことだったと思う。

それでもあいつの誕生日くらいは、と腹を括って性にも合わない手作りクッキーを誕プレとして持っていこうかと家を出た所だった。

手作りの物をあげるなんて初めての事だし、味は大丈夫か?とか焼き加減とか色々な心配をしては自分の女々しさに笑ってしまう。

第一に、喧嘩している奴から物なんて貰いたくねぇんじゃないか、もしかしたらこれが仲直りのキッカケになるんじゃねぇかとか。

色んなことを考えながら歩いていると、前から来た通行人に肩が当たってしまった。

「あ、すんません。」

気持ち程度に振り返っては謝意の言葉を申しつつ、また歩きだそうとすれば、後ろから右肩をグイッと引っ張られ強制的に振り返させられる。

「おい、兄ちゃんよぉ。どこ見てあるいてんだぁ?こらぁ??」

肩に掛かる、ぶつかっただけにしては異常なほどの重みを気にしつつ、ご立腹している奴の顔をよく見ればそこら辺によくいる厳ついヤンキーだった。

「だから、謝りましたよね。」

「質問の答えになってねぇんだよなぁ、、」

顔を近づけられては少しばかり退きつつも、朝まで飲んできたのか鼻にかかる吐息は独特なアルコールの匂いがした。

だる絡みに構ってる暇はないと遠回しに伝えては掴まれている肩を払い、今日の主役であるあいつの家へと歩き出す。

「おい、肩が痛くて上がんねぇよ。慰謝料。」

追いかけて来ては目の前に立たれ、右手を差し出し金を出せとせがまれる。

はぁ、とため息を着いては現役高校生に大金などありませんと伝えては若干面倒くささを感じ初めてきた。

普通ならもうあいつの家に着いているはずなのにと心の中で嘆いてはこの男とのやり取りを交わす。

「んなら、お母さんとかお父さんの口座から引き出せるとか色々あんだろうよ。」

これ以上は真面目にだるいなと思い、走り出そうかと思えば背中に拳のめり込む音が聞こえるのと同時に痛みが加わった。

急な衝撃に耐えられず、その場に倒れ込み、咳き込んでは呼吸を整える。

殴り合いなんて久しぶりだ。

と言っても1週間ぶりなんだろうけど。

なんて呑気なことを考えつつ、渡す予定だったプレゼントが入っている鞄は遠いところに投げつつ喧嘩の体制に持ち直した。