「ごめん、陽葵ちゃん」
バタバタと小走りで戻ってきた蓮くん。
「ううん。大丈夫」
さっきのことで、なんだかいつものように笑えない私と、電話に出る前の不機嫌そうな蓮くんで、ちょっと変な空気になる。
「……そろそろ帰ろっか?」
「……うん」
レジでお金を払うときに「もう帰るの?」なんて言う声が聞こえてドキッとする
あの、茶髪の人が私の目の前にいた。
びっくりして思わず蓮くんの後ろに隠れる。
「そんなに怖がらなくてもいいじゃん」
「……何の用ですか」
私の前に出てくれた蓮くんの服をギュッと握る。
「ん〜?また陽葵ちゃんに会いたいなぁって。いいよね?」
「嫌っ……!」
「連れないなぁ」
そう言いながらも茶髪の人はニッコリと笑ってて。
「行こ。陽葵ちゃん」
蓮くんに腕を引かれてこの店を後にした。