「髙橋〜ちょっとこっちお願い」
「あ、はい」
そう返事をしたゆうくんはアツミさんから離れ、私の頭を撫でた。
「終わったら早く帰るから」
「ん……」
大きくて、温かい、大好きな手。
頭を撫でられて、本当は嬉しいのに……心の底から喜べない。
厨房に行くゆうくんの背中がなんだか見れなくて。
キュッと下唇を噛んだ。
「じゃあ私も戻るわね。ゆっくりしてって」
なんて言ったアツミさんも、ニッコリと笑って厨房の方に行った。
……。
「ちょっと、トイレ……」
不安とか、虚しさとか、いろんな気持ちがぐるぐる回って……我慢できなくなりそう。
蓮くんにそう言葉を残して私は逃げるように席を立った。