「い、痛っ……!」


その声に反射的に陽葵の手を離した。


行き場を無くした俺の手の平。
それをゆっくり握りしめる。



「……」


たとえ陽葵が無自覚に煽ってきても、病人に手を出すのは絶対に嫌だ。

そこまでぶっ飛んだ人間じゃない。

好きな人を前にしてもある程度理性は保てる。


いや、意地でも保ちたい。



だが……まるで生き地獄だ。


この状況、俺はどうすればいい?



ほんと、

「勘弁して……」



そうポツリと呟くと、陽葵は聞こえていたのか潤んだ瞳で俺を見つめた。

「嫌、なの……?」


ドキッと大きく心臓が鳴る。


やめてくれ。

そんな捨てられた仔犬のような目で見ないでくれ。



「……」

これじゃあ(らち)が明かない。


グッと下唇を噛んで覚悟を決める。