「この子ったら、ほんとあの日を境に祐介くんにすっかり懐いちゃって……ごめんなさいね?」
少し困ったように笑ったお母さんに、私はわかりやすく口を膨らました。
懐いてるんじゃないもん。
ゆうくん彼氏だもん。
「ゆうくん行こ」
玄関で待ってるゆうくんの腕を掴んだ。
「あら。あらあらあら?」
なんて訳のかわらないことを言うお母さんを耳で聞き、玄関のドアを開けて外に出た。
外に出た瞬間、セミの鳴き声が止めどなく聞こえてくる。
働き者のセミの鳴き声は、それだけで暑さを感じてしまいそうなくらい。
少し早い時間帯だから日中と比べて日差しはまだ強くない方。
夏はまだまだ終わらない。
「ゆうくん、何時の電車に乗るの?」
「車があるからそれで行こう」
「え!ゆうくんの車!?」
「そうだよ。嫌?」