咄嗟についた嘘。


キスしてたなんて言えるわけもなく、逃げるように窓の外を見る。


「お別れって……。実家に帰るって言ってたんだから。また会えるじゃない」

「……」


嘘だから、何も言えなくて黙っていると、お母さんは車を走らせた。


車が進むと“ゆうくんと離れちゃう”って実感してきて。

ドアミラー越しにゆうくん家のアパートを見つめた。


どんどん小さくなっていくアパートに、一緒に暮らしていたときの楽しい思い出が蘇ってきて。

キュッと胸を締め付けられた。


……もう、寂しくなっちゃったよ……ゆうくん。



ゆうくん家が見えなくなるまで、私はずーっとドアミラー越しに眺めていた。







   * * *


久しぶりの我が家。

1ヶ月も離れてたわけじゃないけど……なんだか懐かしく思う。