「飲み過ぎだろ、蓮」

俺は手に持っていた缶ビールをテーブルの上に置いた。


「そんな事ねぇよ。祐介こそ言い過ぎだろ“手なんか出すか”って」

「は……?」

「陽葵ちゃん、祐介に懐いてんのに“なんか”って言葉は傷付いたんじゃねぇの」

「それはねぇだろ」


陽葵は俺のことを兄のように慕ってる。

所構わず抱きついてきて、無邪気に笑う。


その気が無い事なんかすぐわかる。


「ねぇ祐介、陽葵ちゃんのこと妹でしか見てないの?」

「……見て、ない」

「ほんと?」


麗華(れいか)に鋭い視線を向けられ、逃げるように目を逸らした。


見てないわけが無い。

いつからだろう、陽葵を妹として見れなくなったのは。


どんどん可愛くなっていく陽葵に焦りを感じて、あの頃の俺は照れ隠しから陽葵から離れた。