亮ちゃんは、昔同様困ったような顔をして私を見た。
 「ごめん。俺と知り合いだったと言うと、雫が質問攻めになりそうで、つい知らぬふりしてしまった。でもすぐに後悔した。雫が顔を下げて見せてくれなくなったから。さあ、顔をよく見せて。」

 亮ちゃんは両手で私の顔をこちらに向けさせて、にっこり笑った。
 「雫。綺麗になったね。いくつになったの?」
 「26。もうすぐ27。」

 「そうだな、雫の誕生日は八月だったね。」
 「覚えててくれたんだ。そういう亮ちゃんはかっこよくなったね。まあ、昔からか。」
 つい、言ってしまい恥ずかしくなって、口を押さえた。

 頭を撫でる懐かしい手。
 「……雫。相変わらず赤くなって可愛いな。ハムスターだったのに、綺麗な女の子になっちゃったな。」
 「亮ちゃん、お母様は元気?」

 「ああ、相変わらずだよ。親父もいるからさらに元気になった。そっちは元気?楓は?」
 「ふふ、驚くなかれ、亮ちゃんにフラれてすぐに付き合った人と結婚したよ、去年。」

 「そうか。それは良かった。じゃあ、雫は今ご両親と三人暮らし?」
 「うん。亮ちゃんはどこに暮らしてるの?前住んでいたところは?」