やっと、解放されて遠くの2課をつま先立ちで覗く。
 背が低いのも考え物。
 見えないよー、背が高い男の人がたくさんいて。

 あ、いたいた。時田。
 窓際でこちらを向いて誰かと話してる。
 近づくと、鋭い視線。え?時田と一緒にいるの、もしかして。
 「おーい、花崎!こっちだ。」手招きする時田。
 横には、もう少し背の高い噂の高野さん、亮ちゃんが見える。

 亮ちゃんに向かって会釈をし、時田に分厚いファイルを渡す。
 「花崎、助かったよ。……高野さん、部長から頼まれてた書類これです。」
 「……ああそう、ありがとう。っていうか、時田君、花崎さんに頼んだだけ?」

 「いや、こういうのは僕が探しても一時間かかったって見つからないから、ここはエキスパートの同期に頼んだ訳です。」
 「花崎さん、忙しいのにありがとう。ちょっと話せる?時田君、さっきの件はまだ内密にな。」
 「はい、了解です。じゃ、花崎ありがとう。またな。」手を振って時田が去って行く。

 亮ちゃんは、こちらを見て会議室を指さすと先に入っていく。
 ブラインドを自動で下ろし、外から見えないようになった。

 後ろから私が入ると、ドアをしめて鍵をする。

 「……雫。久しぶりだね。」
 「……さっき、初めましてって言いましたよね。」
 可愛くない物言いになる。だって。寂しかった。