春―…。

桜が舞い散る中で、あたしは桜の木の下で立っていた。


その頃、あたしはまだ15歳で、高校の入学式があった日だった。

「綺麗・・・」

誰にも聞こえないような小さな声でそう呟くと、あたしは後ろを振り返った。

「幸♪」

聞いてて飽きないアルトの声があたしの名前を呼ぶ。

あたしの名前は三上幸。

幸せになってほしい、と願って親がつけてくれた名前が好きだった。


「ナオさあー、思ったんだけど」

「何々?」

「高校生になったら、彼氏できてさぁ、すっごく幸せに高校ライフを過ごすのって、ちょっと平凡じゃない?」

「だね。でも、どんなのがいいの?」

「んー、昼ドラみたいな!」

「何それェ!?」


キャッキャッ。と弾んだ笑い声が響く。

彼女は石原奈音。

中学3年の時に1番仲良くて、そのまま同じ高校を選んだ。




この頃は、まだ何にも知らなくて・・・