教室に着き、担任が紹介され私たちは自己紹介をすることになった。

嫌な汗が流れる。
私は人前で話すのが極端に苦手だった。


次々と皆が普通の挨拶をしていき、私の番が回ってくる。
重い腰をなんとかあげ椅子を引いて立ち上がる。



「……早見怜です。よろしくお願いします。以上です」



それだけ。
たったそれだけを言ってすぐに座った。

一瞬だけ教室がしんと静まり返ったあと、遅れて拍手がまばらに聞こえる。

またやってしまった。
なにクールぶっているんだろう。ただ上手く喋れないだけなのに。



案の定、私はその日から「クールで落ち着いている」というレッテルを貼り付けられ、今後を過ごすことになる。

舞もこの私の状況には苦笑いしていた。




「ねえ! 怜ちゃんは何部に入る?」

「え……部活かあ」



放課後舞に話しかけられ、私は頭を悩ませる。
今日から1週間、部活の見学ができるらしい。
舞は私の返事を待たず、色々なところに私を連れ回した。
テニス部、バレー部、卓球部……そして散々連れ回されて疲れた頃に最後に美術部にたどり着いたのだった。





「……美術部か」

「気になる!? 怜ちゃん絵得意だもんね! 最初からここにくればよかったかな?」

「……ううん、色々見せてくれてありがとう」




元々絵が好きだった私は少し見学をした後、迷いなく美術部に入部することを決めた。
舞は元々スポーツがしたかったようだが、「私がいるなら」ということで一緒に美術部に入った。


舞は絵が苦手なはずだけど……と思いながら、合わせてくれた優しさにこっそり感謝した。