(どうしたらこの子を助けられるんだ……)

桜士が必死で考えていると、一花が素早く手を挙げる。その顔は真剣そのものだった。

「……私の血を使ってください」

一花の言葉に、ヨハンたちはさらに緊張したような顔を見せる。ナタリアが口を開いた。

「一花、それはーーー」

ナタリアが何かを言いかける。だが、それを一花は遮るように言った。

「私の血を使って、お願い。みんなは私の血液型をよく知っているでしょ?」

「四月一日先生は、B型のRHマイナスなんですか?」

桜士が訊ねると、一花は「いいえ」と首を横に振る。そして、真剣な顔で一花は続ける。

「私の血液は、RH nullです」

その言葉に、桜士は目を大きく見開く。それは、黄金の血(ゴールデン・ブラッド)とも呼ばれる貴重な血液だからだ。

通常、血液に含まれる赤血球には三百種類もの抗原を持っており、それにより血液型が決まる。だが、このRH nullはそれらの抗原を一切持たない血液なのだ。