「B型のRHマイナスか!」

アルフレッド、モニカ、リティク、そしてオリバーが同時に言う。安心に包まれていた空間は、一瞬にして緊迫したものに変わった。

「RHマイナス……」

桜士の表情も固くなっていく。

人間の血液の中には、バクテリアやウイルスなど体に有害な物質を破壊する力を持った抗原というものが存在する。それをRH抗原と言う。RH抗原は非常に複雑で種類が多いのだが、一般的にはC・c・D・E・eがよく知られている。これらのうち、D抗原がある場合をRHプラス、ない場合をRHマイナスとしている。

RHマイナスの発現率は、白人の十五%に対し、日本人はわずか0.5%しかおらず、二百人に一人、と言われている。

「僕はRHプラスだ」

「私も……」

暗い表情でクラウディオとナタリアが答える。設備の整った病院でないここに、RHマイナスの血液はもちろんない。そんな中、このままオペを続けるのは危険すぎる。