「朱莉ちゃんと光くんかな?」

ヨハンがニコリと笑いながら、ゆっくりと朱莉に近付いていく。涙で目を腫らしながら、朱莉は何度も頷いた。

「助けて……!光、木にぶつかって動かないの!」

朱莉は体を震わせている。アルオチが朱莉に毛布をかけ、オリバーが朱莉の脈を測りながら言った。

「大丈夫!ここにいるのはお医者さんと看護師さんなんだ。光くんを絶対に死なせないよ」

アルオチとオリバーが朱莉を励ます横で、桜士たちは光の診察を始める。そして一分もしないうちに、彼が深刻な状態にあるとわかった。

「折れた肋骨が、肺に突き刺さってる……」

クラウディオが言い、一花が口を開く。

「このまま放っておいたら、肺に血が溜まって肺挫傷を起こしてしまうわ。一刻も早くオペをしないと」

だが、この木々と雪で覆われた場所に救急車やドクターヘリは入れない。恐らく、要請をしている間に光の命は消えてしまうだろう。その時、桜士の目にあるものが止まった。

「四月一日先生、あそこでオペをしましょう」