以前、一花に歴史を教えた時は全く進まなかったものの、スキーは桜士が教えて数分ほどで滑ることができるようになっていた。十とは大違いである。

「わっ、こんなに滑れるなんて驚いてます!」

雪の上ではしゃぐ一花に、桜士の胸がトクンと音を立てる。一花の頭についた雪を優しく払い、桜士は口を開く。

「四月一日先生は飲み込みが早いですね。教え甲斐があります」

「本田先生の教え方が上手だからですよ」

一花がふわりと笑う。その後ろで、ヨハンはどこかつまらなさそうにしており、アルオチに叩かれつつどこかへ連れて行かれていた。

「四月一日先生、すごいですね……。数分で滑れるようになるなんて……」

未だにへっぴり腰の十が、どこか疲れたような表情で話しかけてくる。一花は「大丈夫ですか?」と心配そうに声をかけ、桜士の中に十に対する怒りがフツフツと生まれた。

その時、空をふと見上げたリティクが口を開く。

「何だか空、暗くなってきたな……」