「いいよ、一緒に練習しようか」

人当たりのいい笑みを桜士が浮かべると、十がどこかドン引きしたような表情を浮かべる。いつもの厳しい表情と、たまに見せる笑みしか知らない彼が見たら、子どもに優しく接する桜士は別人だろう。

「雨宮、何か失礼なことを考えてないか?」

「イエ、ソンナコトナイデス」

桜士がニコリと笑いながら問いかけると、十は目を逸らしながらカタコトの日本語で返す。そんな二人を不思議そうに見上げながらも、子どもたちは「早く教えて〜!」と言い、桜士の腕を引っ張った。

「うん、じゃあこのお兄さんと一緒に練習していこうね」

「は〜い!!」

子どもらしい元気な声が響く。冬の寒さも感じさせないほど子どもは元気だ。それを見ていると、自然と桜士の顔に笑みが浮かぶ。

「じゃあ、まずはーーー」

一つずつ丁寧に桜士は教えていく。小学生たちは桜士たちに会う前にスキーを教えてもらっていたはずなのだが、桜士が少し教えるたびに喜んでいる。