肉親を突然亡くしてから、もっとなにかできたんじゃないかと、何度も何度も自分を責めた。

 見送りの時にお土産を頼まなかったら? 無事に帰ってくるように月の女神に祈りを捧げていたら? 私も一緒について行っていたら? そうしたらあの事故が起きなかったかもしれないと、どうしようもない後悔を抱えて泣いた。

 だから私は後悔だけはしないように全力で生きてきた。今も後悔しないように、できるだけのことをしたい。

「今までのような態度では受け入れられませんが、節度と礼儀をわきまえ、淑女として振る舞ってくださるのなら、力になりたいと思ったのです」

 エルビーナ様の隣に腰を下ろして、ドレスをギュッと握った拳をそっと包み込む。拳から伝わる震えは、傲慢さでも怒りでもなく、心の奥に隠してきた悲しみだ。

「うっ、ううう……うわあああ! 誰も、誰もわたくしの話なんて聞いてくれなかったの! わたくしもいつか帝国で好きな相手と結婚できると思っていたのよ……なのに、なのに……!!」
「そうですね、それはつらいことだったと思います。では、これからは落ち着いて過ごすことはできますか?」

 ボロボロと大粒の涙をこぼしながら、やっと本当の気持ちを吐き出せたようだ。つきものが落ちたような、十八歳の少女らしい素顔を私に見せてくれる。