ここでフィル様を巻き込んでは、取り返しがつかなくなるかもしれない。それなら私だけが悪者になれば問題ない。最悪、フィル様の婚約者でいられなくなっても、フィル様が大切にしてきたこの国を守れれば、それでいい。
そして、馬車に乗り込むために外へ出たところで、私は友人に助けを求めた。
「バハムート、フェンリル……助けて!」
私の呼びかけに応えて、大きな銀翼をはためかせたバハムートが空から降り立つ。フェンリルは私の影の中からするりと飛び出し、あっという間に元の大きさに戻っていく。
剥き出しの牙から唸り声をあげ、皇太子を威嚇した。
「うわあああっ! なんだこの化け物は!?」
《これ計画が狂ったって怒られるか?》
《だが、ラティシアの危機には代えられん。甘んじて処罰を受けよう》
威嚇しながらもポソポソと何か小声で会話している。急に呼び出したからバハムートやフェンリルの都合が悪かったのかと思い至った。
「ご、ごめんね! もう、どうにもならなくて……」
《よいのだ。それで、敵は此奴か》
《ひ弱な人間の分際で、喉元掻っ切ってやる》
「た、助けてくれ——!! 魔物が出たぞっ!!!!」