白くすべすべとした滑らかな両手で顔を覆い、泣き出したナーギニーをシュリーは優しく抱きとめた。人に触れ、その心に触れ、少しずつ外界に溶け込む少女の成長を、我が子を見守るような(いつく)しみのある(まなこ)で受け止める。シュリーは柔らかく微笑みながら、その願望に希望の光を差し伸べた。

「あなたが踊ったカタック・ダンスは激しくて、あなたにはちょっと向かない舞ね。わたしのバラタナーティアムを踊ったら、きっととても可憐で素敵な筈よ。砂の城に着いたら、踊りの稽古をつけてあげるわ」

「あの踊りが……バラタナーティアム……?」

 シュリーの腕の中で、涙に震えた小さな声が呟いた。北インドの代表的な舞踊であるカタックに対し、バラタナーティアムは南インドを代表する有名な古典舞踊の一つだ。が、隔離されて育てられた彼女はその名は知っていても、踊りを目にすることは今まで有り得なかった。

「そうよ、指と眼の動きで心情を表すバラタナーティアム。わたしの気持ちも分かってくれた今のあなたならちゃんと表現出来るわ。他には何がしてみたい? 城では料理は難しいかもしれないけれど……」

 その励ましと申し出に、自分を卑下することしか出来なかった心が、軽やかに波立ち始めたのを感じた。濡れた頬から掌を外し、未来を灯して煌めく瞳をシュリーへとおもむろに上げた。