「私も……シュリーの手みたいに、なりたいわ……」

 再び容器から取り出されたハロワが、少女の掌の上で一瞬止まった。渡して慌ててその手を隠す。シュリーの琥珀色の手はナーギニーのそれより一回り大きく、手作業の所為(せい)で節は盛り上がり、お世辞にも美しいとは言い難いいわゆる「働く手」であったからだ。シュリーは恥ずかしそうに俯き、

「何を言ってるのぉ……こんな手……醜いでしょ?」

 それでも冗談交じりに笑ってみせたが、刹那ナーギニーは顔を真っ赤にさせた。

「そ、そんなことないわっ!」

 咄嗟に否定したナーギニー自身も、いつもは動じないシュリーでさえも、その大声には驚いたようだった。ハッと我に返ったナーギニーは、次の瞬間には表情を崩し、その戸惑いを隠せない双眸からは、泉のように涙が溢れ出た。

「違うの……私、今まで何もしたことがなかったから……。シュリーの手はとても器用で、あんなに素晴らしい舞を見せたり、こんなに美味しいお菓子を作ったり……私にも出来たらいいなって……。私、シュリーの手が大好きよ……だから、隠したり……しないで――」