(ふう、今日もなんとか、完璧な令嬢としてごまかせたわ)


 そう、私レイラ・クライトン伯爵令嬢は、社交界で完璧な令嬢だと思われている。でも本当の私は無趣味で、少女小説はもちろんドレスや舞踏会にも興味がない。令嬢の嗜みである刺繍もグレッグが作ってくれる。社交も彼が指示してくれないとわからない、完璧とはほど遠い「ニセモノ令嬢」だ。


 反対に婚約者のグレッグ・ラウザー伯爵令息は、女性が好むものは全て好きらしい。少女小説を愛読し自分で作ったケーキを食べ、大切に育てたハーブティーを飲む。趣味はもちろん刺繍。最近は真面目に頑張っているけど、本当は騎士団の仕事も嫌がっていた。


 それでも鍛えられたたくましい体でタキシードを着こなす姿は、私が隣にいるのにも関わらず令嬢達の視線を一身に惹きつけている。