「ニセモノのあなたより、私の方がグレッグ様を幸せにできるわ」
先日そう言った彼女が、婚約者のグレッグの胸に顔をうずめている。信じられない気持ちで見ていると、グレッグの腕が彼女の背中にまわろうとした。彼女は私の方を見て、ニヤリと笑っている。
その瞬間、私は弾かれたように2人に背を向け走り出した。曇っていた空は暗い雨雲に変わり、私の頬を雨粒が濡らしていく。
(いつから……? だってこの前の夜会も、その次の日もいつもどおりだったのに)
2人がいつからこんな関係になっていたのかわからない。私は原因を探るように、ほんの数日前の日々を思い出し始めていた。