[side]うるる


俺には世界一好きな人がいる。
鋭いもなにも普通の人ならわかるか


そう。好きな人はりりあだ。


いつもあの声を
あの瞳を
あいつを




ーー独身したくてたまらないーー




こんな事思ってるって絶対に言わないけど



今は体育の授業。
グランドでハードルをしている。



ここから、りりあの教室が見えるからじっと見ていたら



あのウザくて有名な女教師がりりあに絡んでいた。



本当は今すぐに殺したい。
それぐらいりりあと関わるヤツ全員に嫉妬している。



特に"樹"ってヤツが1番鬱陶しい。
次にりりあの事をりりちゃんって呼ぶ女。



そいつらが今、1番の敵。
幼馴染だからって引っ付きすぎだ。



そんな事を思いながらウザい女教師に絡まれてるりりあを見つめる。



今の体育の授業なんざ、心底どうでもいい。
俺はりりあさえ居れば何もいらないと本気で思ってる男だ。



りりあは冷たい目で女教師を黙らせた。
さすが俺の惚れた女だ。



俺があいつに惚れた時は今も鮮明に覚えてる
確かあれは2年前



ーー2年前



その日、俺は父親の頼みで期間限定スイーツを買わされていた。



「めんどくせぇ…」



正直その日は物凄く気分が悪かった。
でも、今思えばスイーツを買いに行ってよかったとさえ思う。




俺は家に帰るため歩きで帰ろうとしていた。
スイーツ屋はそこまで遠くなかったから



家に帰る途中、"不良"に絡まれている
小さい女がいた


何してんだ?
いつもの俺なら見逃さずに助けていただろう


でも俺は気分が悪かったため無視をして帰ろうと思ってたんだ。



「俺と付き合って」



その声は絡まれている奴らじゃなくて
男が女に告白している現場。



絡まれていた女も絡んでいたやつらも"俺"も
その告白現場に目を奪われた。



「絶対無理。」



あーあ男の方かわいそ。
キッパリ振られて
あれは立ち直れない



「どうして?」



男は最後にこれだけ聞きたいと言った声で語りかける



「あんたみたいなチャラいヤツ大嫌い」



女の言う通りその男は一言で言うとチャラい
修羅場になりそうな予感がしてその場から立ち去ろうとすると、



すぐ横を絡まれていた女が通り過ぎた。
絡まれている所しか見ていなかったから
ちゃんと顔を見るのは初めてだけど





1番の感想はーー美しいーーー




俺は後を追うように歩いた。
こいつの事が知りたい。こいつの事がきになる。




この感情は何だ?
わからない…




「あのさ」



思わず目を見開いた。
その透き通るような綺麗な声に



「な、何でしょう!りりあ様!!!
貴方に話しかけられるなんてこれ程嬉しい事はございません!!!」



そいつらは同じ学校なのだろう制服が一緒だった。




だが、告白を断ったこの女はさっきとはまるで別人のように絡まれていた女にキラキラとした瞳で、声もワントーン上がっていた




そうか。りりあと言う名前なんだな。
名前を知っただけでうるさいぐらい心臓が暴れだす




一方女の方は目をキラキラとした尊敬する瞳の女はりりあと言う女を見ていた。




「今さ、チャラいから、付き合わないって言った?」



「は、はい?」



何を言うのかその様子を見ていると
りりあと言う女は淡々と喋り出した。



「私は、人を見た目で判断する人が大嫌い」


「え……っっ、!」



その途端女は顔を真っ青にし、この世の絶望のように膝から崩れ落ちた。



「どうして、人をよく知りもしないのに
見た目で判断するの?」



「そ、………それは、……ご、ごめんな…さい………!」



「謝る相手違うと思うけど?」



女は男の方を向いて
頭を下げた。綺麗な90度で。


そして、



「人を見た目で判断してはいけないよ。
みんな違ってみんないいのだから」




最後に微笑んだりりあと言う女の顔俺の心臓に衝撃が走る。



あぁこれが恋ってやつ?



「りりあ様やはり考え直しましょう」



さっき絡んでいた"不良"いや、
"俺の知らない人"




「私は絶対嫌」


「で、ですが……」


「………」



なんの話をしているのかわからないが、
きっと大切な話なのだろう。



「しつこい。何度言ったらわかるの私はもう絶対に"執事"にならない」



!?執事!?
これは、関わるチャンスか?



奇遇なことに俺はお金持ちと言う立場だ。
だから執事として関わるチャンスがあるかもしれない。



だかなぜ執事にならないんだ?
もちろん女と言うこともあるが"もうならない"
とはどう言う意味だ?





前までやっていたという言うことか?
わからないな……




「では高橋と言う所はどうでしょう」




は?今俺のことを言ったか?
もしかしたら……





「そこの名前は?」



「うるると言います」



「……挨拶ぐらいは行ってやる」


「!……か、かしこまりました!」




敬語を使ってるやつは息を飲んだのがわかった。希望が見えたように目をキラキラさせていた。




と言うか、挨拶?冗談じゃない
おれがこの綺麗な女と喋れるわけない




で、でももし俺の執事になったら
想像するだけで天国に行きそうなぐらいだ。




そのあとは、
りりあが挨拶に俺の執事になり
今のように喋れるまで時間がかかったが




幸せすぎてあんまり覚えてない。
今あいつが俺のとこにいるのが奇跡みたいなものだ。




それぐらいりりあは執事としての、才能があり言葉遣い、礼儀、何にしても完璧な執事だ
だからりりあを求めてこの国に来るヤツだつている


世界一優秀な執事だ。


取られたくない。




毎日その言葉を脳内に暴れ回る。
いつか離れて行きそうで怖いんだ。




頼むから。 
俺に早く堕ちて。





END