先頭を歩く倉本くんと沙綾ちゃんは、カレー作りの時の話をしながら盛り上がってるみたい。

今日一日を見てて思ったけど、やっぱり二人はかなり気が合うみたい。

恋愛的な何か…というよりも、同じ目標のために手を取り合う「戦友」って感じかな?

ノリツッコミを交えながら楽しそうに会話している。


そんな二人の少し後ろを歩くのは、龍泉寺くんと穂乃果ちゃん。

最初は人一人分くらいの距離を開けて横並びになっていたけど、今はその距離が少し縮まっているように見える。

二人が手を繋いで歩く日は案外すぐかもしれないなぁ。 なんて思ってた時、



「ん? アレって……なに? 人?」



先頭を行く沙綾ちゃんが、そう言いながら池の方を指差した。

その声に反応した班のメンバー全員が、そちらへと視線を向ける。


外灯の明かりに照らされた池のほとりに、“何か”が……ううん、誰かが、居る……?

その場所までは少し距離があるため、ハッキリとはわからない。

でも、多分……私たちと同じ運動着を着てるように見えるから、他の班の誰か…だと思う。


おぼつかない足取りで……誰がどう見ても、普通じゃない。



「嘘っ…ねぇちょっと、ヤバくないっ……!?」

「危ないっ……!!」



沙綾ちゃんと穂乃果ちゃんが小さな悲鳴を上げる。

だって、池のほとりに居るその人は……腰くらいの高さがある柵を跨ぎ、そのまま池に入ろうとしているのだから。



「……くそっ」



隣に居た如月くんが一目散に駆け出し、倉本くんと龍泉寺くんもほとんど同じタイミングで走り出していた。

私と沙綾ちゃんと穂乃果ちゃんは身を寄せ合って、ガタガタと震えながら成り行きを見守ることしか出来ない。

私たちの前を進んでた班の人たちもこの状況に気づいたらしく、悲鳴が上がっている。


そして、柵を乗り越えた人は……そのまま力なく池の方へと倒れ込んだ。