「何、結婚前の予行練習みたいなものだ。生活費は互いの家からしっかり仕送りするから不自由はさせん。安心しなさい」
「は、はい……」


帰宅したらすぐに荷造りしないと……。
色々と不安もあるけど、まあ何とかなるか。
よくお互いの家に泊まってたし、一緒に寝たりもしてたしな……。

家事は不安だけど、この際覚えてみるのもいいか。
うん、なんとかなるよね……。

そんな風に考える私も白凪家ののんきの血がしっかり流れているんだろう。

それから慌ただしく引っ越しの準備に取り掛かり、休日の間になんとか引っ越しを完了させた。
ほんとに学校から徒歩圏内で朝の時間にゆとりが出来たのは嬉しい。
陽当たりも良いし、新築で部屋も綺麗だ。


「蒼永はよかったの?」
「何が?」
「久々に帰って来たのに、実家じゃなくて」
「じいちゃんに咲玖と一緒に住みたいって言ったの、俺なんだ」
「え?そうなの?」

「咲玖とずっと離れてたから、一緒にいたくて」


蒼永はそっと私の手を握りしめる。


「…会いたかったよ、咲玖」
「私も蒼永に会いたかったよ」


真正面から蒼永を見つめて、自然と笑みがこぼれた。
大人っぽくなったと思ってたけど、中身は寂しがりのままなのかもしれない。ふふふ、かわいいな。