「ジーク王子……」


 まさかこんなところまで来るとは思わなかった。エドも想定外だったようで、同じ様に驚いている。それにジーク王子のエドに対する態度は、昨日と全く違う。呼び捨てなんてしていなかったのに、今はエドに対しての敵意を隠そうともしていない。


「やあ、愛しいローズ。他の男と会っているなんて、僕の妻失格じゃないか?」
「つ、妻!?」


 まだ返事もしていないのに、なんなの!? ジーク王子の妙に馴れ馴れしい態度に、じわりと不安が襲ってくる。ダメよ!今は気持ちをしっかりもっていないと! ちらりとエドがくれた指輪を見て、心を強くする。


 遠くでは両親が心配そうに見ていた。王族を止められなかった悔しさか、父は拳を握りしめジーク王子を睨んでいる。私の周りには護衛がいるし、なにより王族のエドがいる。今すぐ何か起こるという事はないだろうけど、2人は心配だよね……



「なんだよ、なんでそんなにおまえ達の護衛は、俺を警戒してるんだ? 俺はただローズを迎えに来ただけだ。そんなに怖い顔するなよ」


 ジーク王子の赤い目は私とエドを見下していて、とても求婚している人の表情とは思えなかった。エドが私の手をぎゅっと握りなおす。そんなこの場の緊迫した空気を全く気にしていないジーク王子は、顎をクイっと動かし私に命令した。