その日王家の庭では隣国キース国の王子を歓迎するパーティーが開かれていた。その場にいた私、ローズ・アヴェーヌはキース国の王子にもパーティーにも興味がもてず、美しい庭を散策し始めてしまった。


「わあ! 綺麗なお庭……!」


 自分の腰くらいの高さの花畑を見た私は、ワクワクした気持ちで走り出す。しかしすぐに足元の何かに躓き、転んでしまった。


「きゃあ!」
「うわっ!」


 男の人の声がして驚いて振り向いた瞬間、もっと驚く事が起こった。


 エドだ! 目の前にエドがいる!


 一瞬にして全てを思い出した私ローズの意識は、サラの意識に変わってしまった。エドも私の目を見た瞬間に思い出した様で、無言でこちらを食い入るように見ている。


「サラ! やっと会えた!」


 エドが大きな声でそう叫んだ瞬間、私は淑女の笑顔を顔に貼り付け逃げようとする。それなのにエドには簡単に感付かれてしまい、手を捕まれ逃げられない。


「まったく! サラはそんな作り物の笑顔で、僕を騙せると思ってるの?」