「これは! 違うんです! あの、そういう意味じゃなく」
思わず手紙を隠そうと手を伸ばすが、すり抜けてしまいできない。どうやら触ることはできるけど、掴むなど動かす事はできないみたいだ。
「いいんだ、サラ。僕はこの手紙に書かれているように、最低な事をしたと思ってる。実はあの時僕は本気でサラと婚約破棄しようとは思っていなかった。もともとソフィア王女は弟のアレクシスとの縁談でこちらに来てたんだけど、2人の会話を聞いたら焦ってしまってね」
エドワード様が恥ずかしそうに、あの日の事を話し始めた。
「2人はお互いの国がどう協力すればうまくやっていけるかなど、国の未来を考えていた。でも当時の僕達が話すことと言ったら、魔術のことばかりだっただろう? それでショックを受けたんだ」
「それならあの時エドワード様がおっしゃった事は、なにも間違っていないではないですか」
ソフィア様は第2王子のアレクシス様と結婚するにしても、王位を継ぐエドワード様の結婚相手はもっと真剣に国の事を考えている女性がならなくてはいけない。エドワード様が謝ることなんてひとつもない。
それなのにエドワード様は首を振って私の言葉を否定する。
「いやそれは違う。あの頃僕も魔術のことばかりしていて、勉強をさぼっていたんだ。完璧な八つ当たりで君だけが悪い様に言ってしまった」
エドワード様は嘘をついている。私だって妃教育を受けていて、ある程度エドワード様の進み具合を聞いていたから知っている。エドワード様は子供の頃から教育を受けていたぶん、ほぼ終わっていたはずだ。