「これ……」
王家の紋章の横にあったのは、アヴェーヌ家の紋章だ。ローズの家の紋章が入ってるということはアヴェーヌ伯爵家も公認ということなんだろう。ローズの懐かしいと思う気持ちがあふれてきて、そっと紋章を指でなぞる。
「ローズ様は貴族の出だが絵本では庶民の子にも勇気を与えてほしいという伯爵家の要望で、ただのローズとしているらしいな」
「そうなんだ……」
「この2つの紋章が入った品の売上の一部は、元キース王国の土地の復興や孤児に寄付することになってる。だからみんなこぞってこれを買うんだ」
父の説明で教科書に書いてあった事を思い出す。キース王国は王族の腐敗で領地が荒れ果て困窮していたから、この国の領地になっても立て直すのにかなりの時間とお金がかかったと書いてあった。
「元キース王国の領地もだいぶ改善されて作物の品質が上がったからな。50年くらい昔の事だが、ようやくあっちでもここと同じくらいの暮らしができるようになったらしい」
父の言葉に昔を思い出したようで、お義父さんも頷きながら語り始める。