「じゃあ、読むよ」


 エドが神妙な顔をして絵本のページをめくる。正直子供の頃に学校で習ってからは、前世の戦いのことはすっかり忘れていた。楽しい記憶ではないということもあるけど、もっと忘れたい恥ずかしい出来事があったからだ。


 だって前世の記憶がなかった5歳の私は「悪者をやっつけるなんてすごい!」とか「女の子が戦ったなんてもっとすごい!」と自分を褒め称えていたんだから! ううう! 今思い出しても恥ずかしい……!


学校の授業だってそうだ。先生から偉人として自分のしたことを情熱的に話され、子供の頃言った言葉を思い出しては顔が真っ赤になった。


 そんな私が今日愛する子供たちによって再び苦しめられるとは……。エドがこちらを見てこくんと頷く。私も「かかってきなさい」とばかりに頷き返した。



「これは聖女ローズと英雄フィリップのおはなし」



 どうしよう、しょっぱなからキツイ。なんだかものすごく崇高な存在になってる。どちらかというと私なんて「死なせてたまるか」とエドのことしか考えてない私利私欲の塊だったのに。