でもあのギークにしてみれば、私なんて突然娼婦のような格好で現れた危険人物。何ができるわけでもない、この国の貴族でもない変な女にしか思えないのだろう。昨日の今日だから、情報も混乱して正確に伝わってなさそうだし。しかも私が妹さんの邪魔をしたっていう誤解もあるみたいだから、なおさらだ。


(とにかくまだこの世界に来て二日目! いずれ平民としてこの国で生きるなら、権力を振りかざさないのが一番よ!)


 私はリディアさんを安心させるようにニッコリ笑うと、わざと明るく返事をした。


「私は大丈夫です! ご迷惑をおかけしてすみませんでした。それよりまだ洗い物が残ってますから、お仕事再開しましょう!」
「……そうですね。掃除もありますし、頑張りましょうね」


 リディアさんがほほ笑む姿は、出会った時と同じものに戻っていた。優しく笑いかけてくれることに、私のほうが安心してしまう。