「なら良いですが……。二人とも、迷い人様がここで働いていらっしゃるのは、この世界を知るためです。竜王様はその気持ちを尊重して許可しているだけで、(しいた)げているわけではありません。そこのところ勘違いしないように」
「はい、リディア様」
「では行きなさい」


 その言葉に二人は一礼し、足早に食堂から去って行った。二人が扉から出て行ったのを確認すると、自然と大きなため息が出る。疲れた……。それでもふと辺りを見回すと、テーブルのあちこちにお皿が残っていて仕事が山積みだった。


(自分から働かせてくれって言ったんだから、最後まで頑張らなくちゃ……)


 気合を入れ直すように腕まくりすると、隣でリディアさんがじっと私の顔を見ていた。頬に手をあて、目には不満そうな色が見える。


「もっと厳しく言っても良かったのですが……」
「えっ……」


 きっとこの国は身分社会なんだろうな。リディアさんにとって私は、この国を良くする迷い人。先の迷い人の文字も読めて、竜王様も認めたのだから、国賓扱いしてくれているのだと思う。