私が運命の花嫁だとわかった竜王様は、すぐにシリルさんとリディアさんに報告したらしい。そして竜の問題を解決しに行く前日の夜に、リディアさんがこっそり私の部屋に入って、選定の水晶で調べたそうだ。


 しかも私が起きないように、睡眠が深くなる木の実を食べさせて。


「あの酔い止めの赤い実は、嘘だったんですか?」
「ああ、でも俺も飲んでるものだから、危険なものじゃないぞ。疲労回復に効果があるのだが、そのぶん眠りが深いんだ」

「そういえば、次の日にコップが片付けられてて、違和感があったんですよね」
「あれはリディアが驚きと嬉しさで、興奮してコップを割っただけだ」
「え? リディアさんが?」


(あのいつも落ち着いているリディアさんが、そんなに喜んでくれてたとは……たしかに次の日、ものすごくテンションが高かったっけ)


 私は目をギラギラさせて、赤いドレスを持ってきたリディアさんの姿を思い出す。


「はっ! もしかしてあの日、用意されたあの刺繍が豪華な赤いドレスも、もしかして……」
「ああ、あれは王族だけに許された護符の刺繍だ。竜の悩み相談をした時に、シリルの父はすぐに気づいたな。俺が竜王の妃だと認めていることを」
「だからあんなにリディアさんが興奮して、ドレスを持ってきたんですね!」
「ふん。隠してるのが悪い」


 なんだか思い出せば思い出すほど、違和感があったことの謎が解けてくる。