「リコ、もうすぐシリルたちもこっちに来るだろう。本当に頑張ったな」


 そう言って竜王様は私の手を取り、少し苦しそうに眉間にシワを寄せた。


「痛かっただろう」


 竜王様の唇が、ナイフで切りつけた私の手のひらに優しくふれる。すると、みるみるうちに痛みがなくなり、傷跡も消えていった。


「ありがとうございます。もう平気です……」
「そうか。傷が深くなくて良かった」


 私たちはまた自然と抱き合っていた。伝えたいことは山ほどある。アビゲイル様やギークがしたこと。侯爵もグルだったこと。選定の水晶が偽物だったこと。でも一番先に伝えないといけないことは――


「あの! 竜王様! 実は、私――」


 その時だった。竜王様がニヤリと笑い、私のあごに手をかけた。


「それで? リコはいつ、自分が『竜王の花嫁』だと俺に教えてくれるんだ?」
「へ?」