でも正直この和やかな雰囲気で断るのはもっと怖い。どうしたものかと考えていると、興味津々な顔をした竜王が私に話しかけてきてしまった。


「それで、まず聞きたいことなんだが。おまえはなぜ、わが国キリル王国の言葉が話せるんだ?」
「えっ? 話していませんけど……」
「話してるぞ? ……おい、シリル、リディア、話しているよな」


 そう竜王に尋ねられた二人は、お互いの顔を不思議そうに見合わせたあと「はい」と答えた。


(えっ? じゃあ私は日本語じゃなく、この国の言葉を話してるってこと? 漫画とかで見たように自動翻訳されてるってことなのかな?)


 でもそれを上手に説明できそうにない。どうやって? と言われても私にもわからないから、答えようがないし。混乱した私が黙ってしまうと、竜王が一枚の紙とペンを私の前に置いた。


「ならここにリコの国の言葉を書いてみろ」
「は、はい!」


 当たり前だけどボールペンなどはないらしい。インクにペン先をつけて書く、いわゆる付けペンを受け取ると、私はなるべく綺麗な文字で「私の名前は橘莉子です」と書いた。