「竜王様、お茶を飲む時間です!」


 扉の外からリディアさんの不思議な声掛けが聞こえてきた。


(薬を飲む時間みたいな言い方してる……)


竜王様も彼女の言葉を聞き、私の上から体をどけると、何事もなかったかのように出ていこうとしている。


「じゃあ、リコ。また明日だな。ゆっくり休めよ」
「は、はあ……、おやすみなさい」


 来た時とは違ってかなりご機嫌な竜王様は、睨むリディアさんのことも軽くあしらいながら、自分の部屋に帰って行った。


「ゆっくり休めって、あんなからかい方して、よく言うよ……」


 ベッドに寝転がりながら、竜王様に悪態をついていると、大事なことを思い出した。


「あっ! 結局言えなかった!」


 自分が運命の花嫁だって告白しようとした瞬間にアレだもん。一気に頭が真っ白になって、すっかり忘れてしまった。卵くんも寝ちゃったし、今日はもういい、ふて寝しよう。


 私はそのまま、毛布を頭までかぶると、目を閉じた。しかし、さっきの竜王様とのことを思い出してしまって、なかなか寝付けなかったのだった。