「そうですね。ここまで話したら、もう見たほうが早いでしょう。こちらにどうぞ」


 ルシアンさんが二階に続く階段を、先導していく。私は案内されながらも、さっきの落竜の説明を聞き漏らさないように階段を登った。


「少ないですがこの国にも、野生の竜がいます。たいがいは大人しい竜で、悪さはしません。しかし稀に自分の力をコントロールできず、鳴き続ける子がいるんです。それで親も子育てに疲れ、手放してしまう。それが落竜です」
「つ、つまり、親が子どもを、空から捨てたってことでしょうか?」
「はい。そのとおりです」


 予想していたよりもっとひどい事実に、なんて言っていいかわからない。


「親の竜も必死なんです。人に飼われている竜とは違い、食べ物も自分で探さないといけません。一度でいくつもの卵を産む母親にしてみれば、一頭にかまっていることはできないのです」
「そう、ですよね……」


 日本でだって野生動物は、生まれてきた子全員が、無事に育つわけじゃない。悲しい事実だけど、私はルシアンさんの言葉にうなずいた。