『よーくぞ聞いてくれた! お嬢ちゃん! 俺はね、森に吠えてるんじゃないんだ! 森の奥にいる化け物に吠えてるわけ!』
「化け物? そんなのが森にいるの?」


 私のその言葉に、領主夫婦はそろって首を横に振っている。


「化け物なんていないみたいだけど、どうして森にいると思ったの? 何か気配がしたとか?」
『気配どころじゃねーよ! お嬢ちゃん! 夜になるとな、森から何時間もひどい鳴き声が聞こえてくるんだ。こんなふうにな!』


 そう言うとランドくんは、歯を擦り合わせ、キリキリと甲高い音を鳴らし始めた。


「きゃあ!」
「うわ! ランドやめなさい!」
「すごい音だな。リコ平気か?」
『そのおと、きらい!』