「初めまして、迷い人のリコ・タチバナです」


 今度の領主の館では、夫婦がそろって出迎えてくれた。この領地では主に郵便物などを運ぶ竜を飼育しているらしく、空には小型から中型の竜がたくさん飛んでいる。


「ああやって、荷物を運ぶ練習をしているんです」
「わあ……! いっぱい飛んでますね」
『ぼくも、はやく、とびたい!』


 そのまま空を見上げていると、なにやら雲行きが怪しくなってきた。雨が降ってきたら、護衛の騎士さんたちはずぶ濡れになってしまう。私たちは領主のもてなしを断り、すぐに竜と話すことにした。


「問題の竜なんですが、ある時期から夜中に突然鳴いたり雄叫びをあげるようになったんです。どうやら森に向かって吠えているみたいなんですが、この辺りは獣もいませんし、小動物くらいで竜が騒ぐことはありません。それに不審者が入ってくることもないですから、どうして森に向かって鳴くのか知りたいんです」