なにやら私が気を失っている間に、大変なことが起こっていたようだ。あの場にいたリディアさんたちは平気みたいだけど、騎士たちの掛け声でも弱っている人がいたくらいだ。病人が出ていてもおかしくない。


 するとシリルさんは、フッと鼻で笑って首を振った。


「それどころか、この威圧の件で、竜王様の人気はさらに急上昇していますよ。あの威圧を浴びたいだの、もう一回してくれだの、昨日から要望が多くて大変です。それに竜人は体が頑丈なんですよ。威圧の失神くらいで文句を言う人は馬鹿にされます」
「そ、そうなんですか……」


 さすが強さを重視する国民だ。やっぱり私みたいな日本人と、竜人とではそもそもの考え方が違うみたい。そういえば、キールくんも昨日、竜王様の威圧が気持ちいいって言ってたっけ。


 そんなことを思い出していると、ちょうどキールくん本人が、竜舎から顔をぴょこっと出していた。


『あ! 昨日の女の子だ〜』
「こんにちは。キールくん」
『名前覚えてくれたんだ! じゃあ、僕とけっこ――』
「おい! キール! 体洗ってるんだから、迷い人様にじゃれついちゃダメだ! あっ! 竜王様もいらっしゃったんですね。団長をお呼びしましょうか?」