「竜王様?」
『パパ? 来てないよ? パパが来てたら竜気でわかる』
「そ、そっか……パパ来てなかったの……」


 たしかに窓から外をのぞいてみても、どこにも竜は飛んでいない。もちろん人の姿の竜王様もいない。


(恥ずかしい。ちょっとだけ今夜、竜王様が会いに来てくれるかなって期待してたからよね……)


 私は顔を赤くしながら窓をしっかり施錠すると、カーテンを閉めた。すると二人っきりになる瞬間を待ってましたとばかりに、お腹がポコポコと動き出す。


「そんなことより、ぼく、うれしい! ママになってくれるんでしょ? じゃあ、さっそくパパのところに――」
「待って! あのね、それについてはちょっと考えがあるの」


 そのまま窓辺の一人用ソファーに座ると、深呼吸をする。そして気合いを入れるように、ポンとお腹を叩いた。