噂が消えても王宮に住んでいるのだから、私に対してライバル意識をもったままの人がいてもおかしくない。せっかくたくさんの竜が見られると楽しみに来たけれど、水面下での戦いがあるようで気持ちが落ち込んでくる。


 するとそんなモヤモヤした気持ちを吹き飛ばすような、明るい声がお腹から聞こえてきた。


『ママ! すっごいワクワクするね!』


 ポコポコと陽気に動くお腹を押さえながら辺りを見てみると、たしかに心弾むような光景が広がっていた。私が座っている場所は円形の競技場の真ん中辺り。ちょうど全体を見渡すことができる高さで、たくさんの人で会場が埋まっているのが見えた。


「すごい……」


 観客席の傾斜はそんなに急ではないけれど、のぞき込みすぎると落ちてしまいそうだ。それでもこの広い競技場で竜が試合をすると思うと、ワクワクしてくる。すると、どこからかドンドンと太鼓の音が鳴り始め、中央の扉が勢いよく開いた。