「このことを、他の方にお話ししてもよろしいでしょうか? 迷い人様のことを勘違いしている方も多いので、誤解を解きましょう!」


 いつの間にか隣に立っている彼女が、そう言って、私の手をぎゅっと握った。にっこりとほほ笑み「きっとわかってもらえますわ」と励ましてくれている。なんて心強いのだろう。すると、アビゲイル様は何か思い出したような様子でまた話し始めた。


「そうですわ! よろしかったら明日行われる、竜人競技会にご一緒しませんか?」
「竜人競技会ですか?」


 初めて聞く言葉にきょとんとしていると、リディアさんがお茶を淹れ直しながら、詳しく説明してくれた。


「一年に一度、騎士団員が技術を競う大会があるんです。ここで実力を発揮できれば階級が上がりますし、竜同士を戦わせる試合もあって、大変盛り上がります。応援も許されているので、みなさん見に来られますよ」
「そんな凄い大会があるんですね」
「わたくしも観戦する予定ですので、ぜひ行きましょう」


 すると私たちの会話をずっと聞いていたのだろう。今まで静かにしていた竜王の卵くんが、ほんの少しだけポコンとお腹を蹴った。