「大丈夫です。体調が優れないのですから、そのまま座っていてください。わたくしも座らせてもらいますね」
「す、すみません」


 そう言うと、アビゲイル様はにっこりとほほ笑み、優雅に椅子に座った。何もかもが私と違う、生粋の貴族令嬢という立ち振る舞いに、どんどん自分が恥ずかしくなってくる。


「迷い人様、普通でしたら日常会話をしてから本題に入るものですが、今回は体調が悪いようですから、最初から今日ここに来た理由をお話ししてもよろしいでしょうか?」


 貴族同士のお茶会のマナーがあるのだろう。でも私は早く誤解を解いて安心したいから、むしろありがたい提案だ。私が「お気遣いありがとうございます」とお礼を言うと、早速今日の本題に入った。


「もうご存じかもしれませんが、迷い人様が竜王様の妾に選ばれたと、貴族令嬢のなかで噂になって――」
「そ、それは事実無根の噂です! 私はそのような願望を持っていませんし、竜王様にもそんなこと言われてません!」


(しまった! 早く訂正しなくちゃと思ってたから、食い気味で言っちゃった!)